執筆者:弁護士 石田 真由美
(目次)
1 株主総会とは
2 株主総会の役割
3 株主総会の決議方法
4 株主総会の運営方法
5 株主総会後に行うこと
1 株主総会とは
株主が参加し、決議により会社の基本的意思決定を行うための機関であり、株式会社では設置が必須の機関とされています。
Q:株主総会には種類がある?
A:定時総会と臨時株主総会の二種類があります。
・定時株主総会
→毎事業年度の終了後、一定の時期に年に1回開催される株主総会です。
→計算書類の報告・承認などが行われます。
・臨時株主総会
→定時株主総会以外に必要がある場合に、いつでも臨時に開催する株主総会です。
→例えば…緊急の定款変更を行う場合、定時総会によらずに資本金を増額する場合などに開かれます。
2 株主総会の役割
株主総会は、会社に関する一切の事項について決議ができる会社の最上位の意思決定機関です。
Q:取締役会が設置されている、設置されていないでは、株主総会の役割は違う?
A:違います。
・取締役会が設置されている場合
取締役会が株主総会の役割の一部を担うため、株主総会では会社法に規定された事項及び定款で定めた事項に限り決議ができる(会社法295条2項)。
・取締役会設置の有無に関わらず必ず株主総会で決定されなければならないこと
①取締役・監査役などの機関の選任・解任に関する事項
②会社の基礎的変更に関する事項(定款変更、解散等)
③株主の重要な利益に関する事項(剰余金配当等)
④取締役に委ねたのでは株主の利益が害されるおそれが高いと考えられる事項(役員等の報酬決定等
・取締役会が設置されていない場合
取締役会非設置会社においては、上記に関わらず、株主総会で何を決めてもよい。
~参考情報~
ひとり会社であれば、株主総会は不要か?と思われるかもしれませんが、会社法上は、そのようなことはありません。とはいえ、ひとり会社であれば、構成員1名だけですので、自分で招集を決めて、自分ひとりで開催して、ということになりますが、現実には、株主総会で決めることを自分のなかで検討して、その結果を議事録に残しておく、といったかたちになるでしょう。
3 株主総会の決議方法
決議は多数決によって行われます。決議の要件は、何を決議するか(決議事項)によって異なります。
Q:決議の種類は?
A;普通決議、特別決議、特殊決議の三種類の決議があります。
・普通決議
取締役会設置会社の決議事項の例
→役員の選解任、剰余金の処分・配当、資本金の額の増加
定足数:原則、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主の出席
決議要件:出席株主の過半数の賛成
・特別決議
取締役設置会社の決議事項の例
→定款の変更、事業譲渡等の承認、合併契約・分割契約の承認
定足数:議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席
決議要件:出席株主の議決権の3分の2の賛成
・特殊決議
取締役設置会社の決議事項の例
→人的属性に基づき株主の権利を取り扱う定款の変更
定足数:なし
決議要件:議決権を行使することができる株主の半数以上であって、当該株主の議決権の3分の2以上の賛成等。
~参考情報~
買収のときに持ち株比率が問題になるのは、どの程度株式を持っているかで、その会社において、どのような事項に影響を及ぼせるかが決まってくるからです。
例えば、過半数の株式を持っていれば、役員の選解任を決めることができますし、3分の2以上を持っていれば、合併や分割などの組織変更を決めることもできます。
Q:株主総会の決議を省略できる場合はある?
A:あります。
株主総会の目的事項について、議決権を行使できる株主全員が書面や電磁的記録により同意したときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされます。
ただし、決議省略でも株主総会議事録の作成は必要です。そして、株主全員の同意書(または電磁的記録)を作成し、株主総会の決議があったものとみなされた日から10年間、その本店に備え置かなければなりません。
4 株主総会の運営方法
株主総会の運営は、①招集の決定、②招集通知の発送、③株主総会の開催に分けてご説明します。
①株主総会の招集
Q:招集の決定は誰が・どこがするの?
A:取締役会が設置されている会社は、取締役会の決議に基づき取締役が招集します。
取締役会が設置されていない会社は、取締役が招集を決定します。
ただし、議決権を行使できる株主全員が同意した場合には、招集手続なしで開催できます(が、例外もあります。)。また、招集権者による招集がなくても、株主全員が株主総会を開催することに同意して出席すれば、株主総会は適法に成立します。
②招集通知の発送
Q:招集通知って何?
A:株主総会を招集するために株主に発せられる会議の目的事項等を記載した通知。
Q:招集通知って必ず発送しないといけない?
A:取締役会が設置されていない会社では、書面による通知は不要、招集は口頭や電話でもよい(書面投票・電磁的方法による議決権行使を定めた場合を除きます。)。
~参考情報~
例えば、家族3人で株式を持っていて、お父さんが取締役をやっている取締役会が設置されていない会社では、取締役のお父さんが、夕食のときに、「よし、株主総会をするぞ」と3人に口頭で伝えれば、それは、会社法上の招集手続をとっていることになるのです。
Q:招集通知には何を記載したらいい?
A:下記の事項を記載してください。
・総会の日時と場所
・総会の目的である事項があるときは、その事項(cf:取締役会招集通知)
・総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使できることとするときはその旨
・総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使できることとするときは、その旨
(注意!)前回の定時株主総会の日と著しく離れているときや開催場所が著しく離れているときはその理由など法務省令で定める事項の記載(記録)が必要です。また、一定の議題については、議案の概要を記載(記録)する必要があります。
Q:招集通知に添付する書類はある?
A:あります。会社法上、招集通知に添付すべき書類は、会社法上、会社の形態によって異なっています。取締役会が設置されている会社においては、取締役は、定時株主総会の招集の際に、株主に対して事業報告、計算書類を提供しなければなりません。
Q:招集通知はいつ発送する?
A:株式に譲渡制限が付いているか(株式の全てに譲渡制限が付いていない会社:公開会社、株式の全部又は一部に付いている会社:非公開会社)によっていつまでに発送しなければならないかが変わります。
・公開会社の場合:総会の日の2週間前までに招集通知を発送しなければなりません。
・非公開会社の場合:総会の日1週間前までに発送しなければなりません。
ただし!取締役会非設置会社は定款でさらに短縮が可能です。
③株主総会の開催
Q:株主って出席以外に何かできることはある?
A:株主提案権というものがあります。これは、一定の株式を有する株主は、取締役に対し、一定の事項を株主総会の目的とすること(「議題提案権」といいます。)や、株主総会において、議題とされている事項につき議案を提出(「議案提案権」といいます。)することができます。ただし、議題提案権による議題は、株主が議決権を行使できる事項に限られます。
Q:当日の株主総会の運営は?
A:運営の内容は以下のとおりです。
・議事の運営
議事の運営は議長がいます。議長は、通常は定款で定められますが、定めがない場合は総会で選任されます。
・委任状の取り扱い
会社法は、株主総会に出席できない株主に議決権行使の便宜を図るための制度として代理人による議決権行使の制度を定めているので、株主は代理人によって議決権を行使することができます。
~どうやって委任状で議決権を行使?~
→代理人により議決権を行使する場合、委任状を会社に提出しなければなりません。
→出席できない株主から委任状により委任を受けた代理人が委任状を持参してきたときは、出席株主と同様に扱います。
→代理人の資格を当会社の株主に限定している場合、委任状の確認に加えて、代理人自身が株主であるか否かの資格審査が必要です。
・動議
動議とは、会議体の構成員から提出され、会議の目的事項・総会の運営等に関し、総会の決議を求める旨の提案のことです。例えば、調査者選任動議・会計監査人出席要求動議・延期・続行の動議・議長不選任の動議などの手続的動議、決議事項の議案を修正するなどの実質的動議があります。動議が提出された場合、議長は適切に対処しなければなりません。
・議決権の行使
→原則1株1議決権です。
~参考情報~
議決権行使に対する利益供与を行うと処罰されますので、例えば、会社から、この議案に賛成してくれたら、100万円あげます、などということはしてはいけません。
・取締役・監査役等からの説明
取締役・監査役等は、株主総会において、一定の場合を除き、説明義務を負います。
・議案の採決方法
挙手、起立、拍手、投票その他いずれの方法によっても議決判定さえできればよいとされています。
5.株主総会後に行うこと
Q:総会後に何をすればいい?
A:以下のことを行ってください。
・速やかに株主総会の議事録を作成します。
・登記が必要なものは登記します。
株主総会後の登記申請には、株主総会議事録等の添付が必要です。
・議決権行使にかかる委任状等を総会の日から3か月間備置しなければなりません。
Q:株主総会の議事録は誰が、いつまでに作成する?
A:作成義務者は取締役ですが、作成時期、期限について明文の定めはありません。署名・記名押印は、法令上義務ではありませんが、出席取締役が署名・記名押印を行うのが一般的です。
Q:作成した議事録はどうすれば?
A:株主総会議事録は株主総会の日から10年間本店に備え置く必要があります。
Q:議事録には何を記載する?
A:以下の⑴~⑹を記載してください。
⑴日時
⑵場所
⑶議事の経過の要領とその結果
⑷述べられた意見や発言があるときは、その意見発言の内容の概要
⑸出席した取締役、監査役等の氏名
⑹議長が存するときは、議長の氏名
~参考情報~
株主総会議事録の作成を行っていない会社もありますが、例えば、投資を受ける際や、M&Aの際などに、議事録の提出を求められることもありますので、会社が適正な手続を経て運営されていることを示すためにも、作成しておくべきです。
以上